建替えにより生まれ変わった、日本初の民間分譲マンション「四谷コーポラス」
年々分譲マンションのストックが増加し、築年数の古いマンションも増えつつあります。国土交通省によると、2018年末に約81.4万戸だった築40年超のマンションが、10年後の2028年にはおよそ2.5倍の約197.8万戸にまで増加するといいます。それに対してマンションの建替えはあまり進んでおらず、2018年4月から2019年4月にかけて、建替えが完了したマンションは7棟しか増えていません。そんな中、積極的にマンション建替え事業を推進する旭化成不動産レジデンスが、「四谷コーポラス」の建替えを完了。「アトラス四谷本塩町」として生まれ変わった日本最初の民間分譲マンションを見学してきました。
最古の民間分譲マンション「四谷コーポラス」の先進性
1956年に誕生した「四谷コーポラス」。アメリカの集合住宅に学び、画一的な出来合いの住宅を販売するだけでなく、入居者それぞれの想いで好みに応じた住宅をひとつの建物として建築するという思想のもとつくられた、民間初の分譲マンションです。
メゾネットタイプの導入や、入居者の要望に応じた和風設計と洋風設計の使い分けなど、集合住宅ながら戸建てのようなオーダーメイド設計を目指した点が特徴です。さらに現在のコンシェルジュサービスの原型ともいえる、管理人による外出時の鍵預かりやごみ収集、洗濯クリーニング業者への取り次ぎなど、先進的なサービスも導入。そんな最古の分譲マンションも、築後30年ごろから老朽化による影響が表出し始め、建替えの機運が高まっていきました。
「四谷コーポラス」建替え事業成功の理由
建替えにより「アトラス四谷本塩町」として生まれ変わった「四谷コーポラス」。建替えパートナーとして事業を推進した旭化成不動産レジデンスの阿佐部氏、花房氏に、特徴を聞きました。
「四谷コーポラスは区分所有者の入れ替わりが少なく、相続して住み続ける方も非常に多いマンションでした。管理組合総会の出席率も高く、今回の建替えに際し、9割の方が再取得を希望されたという点でも、稀有なマンションです」(阿佐部氏)
「長年にわたり、マンション内外で良好なコミュニティが築かれていたため、合意形成や地域への工事説明なども非常にスムーズに行うことができました。また住戸の取得に際しては、資金計画に合わせて数々のプランパターンをご用意いたしました」(花房氏)
合意形成から事業決定まで、入居者のマンション管理に対する意識の高さがあってこそ、スムーズに実現しました。これから建替えが必要になる、築古マンションが増えていく中、ますます入居者の管理意識が、住まいの安心と価値を守るためにも重要になってきます。お住まいのマンションの管理の質について、改めて見直してみてはいかがでしょうか。
老朽化マンションの課題に挑む旭化成不動産レジデンス
築年が古く、老朽化するマンションが年々増えていく中、様々な課題から、遅々として建替えが進まない現状に対し、建替え実績No1(※)の旭化成不動産レジデンス。マンション建替え研究所を設立し、積極的に取り組んでいます。
マンションの建替えを行うには、区分所有者の4/5の合意が必要となります。築年数が古いマンションだと、建替えに関する規約が無かったり、区分所有者の所在が不明など、様々な問題により、建替えが進まないケースも多いといいます。
「事業者からしても、再取得を希望する区分所有者の要望に沿うほど、プランが複雑化するため、施工負担も大きくなります。特に小規模マンションでは、余剰容積が十分に確保できず、設計・施工の難しさに対して十分な予算を確保できないことから、敬遠する事業者も少なくないというのが現状です」(阿佐部氏)
そんな中で、旭化成不動産レジデンスが積極的に建替えを推進するのはなぜなのでしょうか。
「建替えの発議から事業完了まで、10年以上かかることもあると考えれば、費用対効果という面では効率は悪いかもしれません。しかし当社は多くの住宅を手掛けてきたハウスメーカーとして、安心・安全・快適な住環境を提供する責任があると考えます。課題は山積していますが、例えば賃貸集合住宅へーベルメゾン10万戸を保有し、建替え中の仮住まいに充てるなど、建替えの不安を軽減するサポート体制などを整えております」(阿佐部氏)
旭化成不動産レジデンスは、有識者や不動産業界関係者、メディア関係者を集め、マンション建替えに関するシンポジウムなども実施しています。こうした取り組みが、世の中の関心へとつながることこそ、住宅の老朽化に伴う社会不安解決への第一歩となるのではないでしょうか。
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