うちレポ予報2019 家を買うのに今年は追い風?向かい風?
Vol.2 住生活コンサルタント・大久保恭子氏に聞く
変化と多様化が進むいま、時代に適応する「住まい」選びの極意とは
2018年は土地が値上がり傾向にあり、住宅も高値のまま2019年が開幕。今年は元号の刷新や消費増税など、様々な変化が待ち受けています。そこで「うちレポ」では、住宅購入を検討する人たちにとって、2019年がどんな年になるのかを占うべく、専門家に突撃インタビュー。第二弾は住生活コンサルタントの大久保恭子氏に話を聞きました。
住宅価格が高騰する中、家族もマンションもコンパクト化が進行
――ライフスタイルが多様化する中で、首都圏における住まいの選び方にも変化は起きているのでしょうか
かつては住宅の快適さの指標のひとつとして、「広さ」が重要視されていました。しかし近年は少人数の世帯が増えたため、コンパクトマンションでも十分に生活できるようになってきています。コンパクトになれば、多少は価格も抑えられるため、住宅(立地)ニーズは都心に向かって集中しているのが現状です。
子育て面でも、郊外の開放的な環境でのびのびというより、都心で高度な教育を受けさせたいという意識が強まっている印象を受けます。
一方で、住宅価格は高騰しているため、都心に近付くほど新築には手が届きにくくなっているため、中古のニーズが高まり、結果、2016年に中古マンションの成約件数が新築マンションの供給戸数を上回ったのではないでしょうか。
また、長寿化も大きな変化の要因となっています。住宅の一次取得者は30代・40代が主流と言われていますが、シニア層の住宅購入比率も多少増加していると推測しています。家は生活を支える器ですから、生活スタイルに合わせてもっと自由に住み替えを考えてみても良いと思います。
働き方改革の次は暮らし方改革? 住宅購入に消費増税は影響なし
――2019年10月には消費税が10%に引き上げられる予定です。住宅購入に影響はあるでしょうか
消費増税が決定してから、住宅ローン減税の期間延長をはじめ、手厚いサポートが続々と整備されているので、住宅に関して言えば、特に大きな影響はないと思います。むしろ住宅を購入する際には、市況に一喜一憂せず、家を買ってどんな暮らしがしたいのかを考えることが大切ではないでしょうか。
例えば通勤や子育てなど、生活の制約が多いほど、住宅の選択肢は限定されます。逆に制約を解消できれば選択肢は広がり、より希望のライフスタイルを追求しやすくなります。例えば勤め先がリモートワークを導入している会社であれば、住まい選びの条件から、「通勤の利便性」を排除することができるため、地価の低い郊外で家を買い、浮いた費用で趣味を充実させるなど、志向するライフスタイルに比重を置いた住まい選びが可能になります。これから働き方の変化が浸透して行けば、職住近接ではなく、遊住近接の時代に変化していくかもしれません。
また、先ほど触れたとおり、定年後も人生は続く長寿化の時代です。健康寿命は75歳と言われていますので、仮に65歳で定年を迎えても、少なくともまだ10年は元気なまま生活することになります。子育ても通勤もないので、より自由な選択ができますから、残りの人生を充実させるための選択肢として、住み替えを考えてみても良いのではないでしょうか。
そのためにも、最初の住宅購入が大切になります。人生の節目節目で住み替えができるように、資産価値を見極めてから家を買うこと、そして次のライフステージの変化(5~10年後)をイメージし、準備をしておくことをおすすめします。
変化のある街は面白い!2019年は進化を続ける“東京イースト”に注目
――激動の年といわれる2019年ですが、注目しているマンションやエリアがあれば教えてください
話題性があるマンションとしては「HARUMI FLAG」でしょう。立地やプロジェクト規模に対して、比較的手が届きやすい価格帯のため、今後も注目を集めるのではないでしょうか。
エリアとしてはこれから変化が期待できる街に注目しています。例えば南千住や深川といった東京の東側ですね。都心に比べれば地価は低く、個人での店舗経営のハードルが低いため、個性的な新しい店舗が下町情緒にミックスされ、暮らしてみたいと思うような面白いエリアへと変わってきていると感じます。
【住生活コンサルタント 大久保恭子氏】
住宅評論を中心に、東京23区の中古・新築マンションの住みごこちを評価するサイト「マンション評価ナビ」を主宰。住まいに関する雑誌・インターネットサイトのプロデュースやマーケティングを手がける(株)風の代表取締役。※「マンション評価ナビ」は2008年度の国が公募する長期優良住宅先導的モデル事業に採択。2009年には、都市住宅学会業績賞を受賞。