うちレポ予報2020 家を買うのに今年は追い風?向かい風?

Vol.2 不動産ジャーナリスト 榊淳司氏に聞く

2020年にもマンション価格暴落は始まる可能性アリ!その心とは!?

年々人口減少が進む中で、首都圏、特に東京23区は人口流入が増え続け、東京都心・湾岸エリアでは今なお新築マンションの建築が進んでいます。そんな中、2020年東京オリンピック以降の住宅、特にマンション市場の変化にはかねてから注目が集まり、様々な予想が飛び交っています。オリンピック以降、果たして噂されるようなマンション価格の暴落は起こるのでしょうか?常識や慣習に真っ向から疑問を投げかけ、歯に衣着せぬ物言いで人気を博す不動産ジャーナリスト・榊淳司氏に率直な意見を伺いました。

マンション価格の暴落は既定路線!?早ければ2020年にも・・・

率直に言うと、マンション価格は2020年中にも暴落する可能性がある。私はそうにらんでいます。

その根拠として、まず景気が非常に悪いことが挙げられます。2019年10月~12月のGDPは-3.6%の予想(2020年2月17日の政府発表は-6.3%。想定を遥かに超える衝撃的な結果だった)。これはリーマンショックが起こった2009年を超える大幅なマイナスです。さらに実質賃金の低下や消費増税による消費意欲の減退、さらにコロナウイルスなどの影響で中国からの流入減少もあり、2020年1月~3月のGDPも同程度のマイナスになると踏んでいます。

ただ、リーマンショック後と異なり、あまり大規模なリストラが行われていないため、景気の悪化ムードはそれほど感じられませんが、不景気であることは間違いありません。不動産市場は景気と連動するため、このまま不況が続けばマンション価格も下がるのが道理です。

また、首都圏、特に東京23区では「マンションは高くても仕方がない」という消費者心理によって醸成されたムードが、マンション価格を押し上げたという一面もあります。しかも住宅ローン金利は史上空前の低金利が継続。共働きによる世帯収入の増加もあって、それなりの世帯が多少高くてもマンションを買えてしまったがために、マンション価格の高騰を受け入れるムードがより強固となりました。当然、売主も売れているうちは価格を下げる必要がないわけです。

しかしここにきて、私のもとに「2020年の東京オリンピック以降、マンションの価格は下がりますか?」という質問が多く集まっています。体感でいうと、10人中9人は、下がる、下がってほしいと考えている様子です。今のマンションは“高過ぎる”、“とてもではないが買えない”というムードが高まり、買い手がつかなくなれば、途端にマンションの価格は下降線をたどることでしょう。

ひとつ面白い話があります。マンションの価格動向を見ていると、都心・湾岸のマンション価格の高騰に対して、大阪ではそれほどマンション価格が高騰していないのです。関西特有の金銭感覚がシビアで、簡単には値上げを許さないという消費者の圧力が働いているのです。情報を鵜呑みにせず、「もしかしたら今の市場はおかしいのではないか?」と疑問を持って立ち向かうムードが生まれたら、首都圏のマンション市場にも大きな変化が訪れるかもしれませんね。

住宅ジャーナリスト・榊マンション市場研究所主宰 榊淳司氏

マンション価格の下落幅はエリアの“地力”で大きな差が出る

今後、マンション価格が現在の相場水準から下降線をたどっていくことは間違いないと思いますが、下落幅はエリアによって大きく異なるでしょう。

例えば表参道など、インフラが発達し、成熟したブランドタウンであれば、価格の降下速度は緩やかになるでしょう。虎ノ門ヒルズ周辺や品川ゲートウェイ周辺のような都市開発が進むエリアでも、価格の急降下は起こりにくいはずです。

一方で、小学校や商業施設、医療施設や鉄道輸送力など、およそ生活するうえで欠かせないインフラが整わないまま、イメージ先行でマンション開発ラッシュが起き、不相応に地価が上がってしまったエリアでは、ショッキングな大暴落が起こっても何ら不思議ではありません。私には“都心のリゾートで叶える夢のような暮らし”というファンタジーが崩れる足音が聞こえてきます。

都心・湾岸に屹立するタワーマンションは希望となるか、はたまたバベルの塔となるのか。2020年も市場動向から目が離せない

都心以外は本当に暮らしにくいのか? こだわりを捨てる勇気を持つべし

2019年に人口流入超過数がプラスだったのは東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、滋賀県、福岡県、沖縄県の8都府県のみ。首都圏は14万人超の流入がありましたが、流入元の人口が減少を続けている限り、遠からず首都圏でも人口減少に転じるタイミングが来るでしょう。

既に首都圏内でも、東京駅から90分も電車に乗れば、空き家が増え始め、月10万円も払えば豪邸に住めるという地域もあります。病院まで車で1時間というような田舎ではなく、生活するには十分なインフラが整っていても、都心から離れているというだけで、投げ売りされているような住宅が山ほどあるのです。

また、よく高齢者は家を借りられないといいますが、それもまた住む場所にこだわっているからです。確かに杉並区の阿佐ヶ谷や高円寺など、若者が多く借り手に困らないエリアでは難しいかもしれませんが、都営三田線の始発駅である高島平でなら、十分に借りられるでしょう。都心からはやや離れるかもしれませんが、生活環境は決して悪くありません。

高齢者に限らず、家が高くて買えない、借りられないという人の多くは、頑ななこだわりゆえに視野を狭めているように感じます。住み慣れた環境や、友人知人の存在など、理由は様々あるとは思いますが、初めから可能性を捨ててしまうのはもったいないのではないでしょうか。見向きもされないような場所こそ、実は宝の山ということだってあるのですから。

どこにいてもスマホひとつで仕事も買い物も、勉強だってできる時代。しかし人は都心に集まり、効率的な暮らしを求め、時間の価値はどんどん重みを増している。そこに本当の安らぎやゆとりは生まれるのだろうか。家と暮らしについて、いま一度じっくりと見つめなおすべき時が来ているのかもしれない

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