うちレポ予報2019 家を買うのに今年は追い風?向かい風?
Vol.1 不動産経済研究所・高橋幸男代表取締役社長に聞く
激動の2019年 首都圏の住宅市場はどうなる!?
2018年は土地が値上がり傾向にあり、住宅も高値のまま2019年が開幕。今年は元号の刷新や消費増税など、様々な変化が待ち受けています。そこで「うちレポ」では、住宅購入を検討する人たちにとって、2019年がどんな年になるのかを占うべく、専門家に突撃インタビュー。第一弾は不動産経済研究所の高橋幸男社長に話を聞きました(取材・文/松本英雄)。
消費増税は心配無用!住宅供給戸数も前年並み?
――2019年は、激動の年となりそうですが、消費増税は住宅市場にどのような影響を与えると見ていますか
2014年4月に消費税が5%から8%に引き上げられた際は、経過措置が切れる半年前(2013年10月)に住宅購入の駆け込み需要がピークを迎えました。当社の調査でも2013年の年間マンション供給戸数は、首都圏で前期比12.2%増となり5万戸を回復しましたが、その反動から2014年以降は大幅に減少し、4万戸前後で推移しています。
2018年の年初に、前回の消費増税と同じように駆け込み需要が発生するとすれば、デベロッパーはそれに乗じて、売れ行きの思わしくない郊外物件を価格調整して捌いていくのではないか、と予想したのですが、そうはなりませんでした。2019年3月末ぐらいまでは多少の駆け込みはあるでしょうが、増税後に予想される需要の落ち込み対策として、すまい給付金の強化、次世代住宅ポイントの復活、住宅ローン減税の3年間延長、住宅贈与税の非課税枠拡大などの消費税率引き上げに伴う住宅取得対策が講じられます。そのためマンション市場にも、購入を検討する方にとっても、それほど大きな影響はないと見ています。また、年間の供給量も前回のような駆け込みによる増加は限定的で、全体的には前年並みの3万7000戸前後で推移すると予測しています。
2019年も大規模マンションが続々登場!市況の変化は予測不能?
――今後の物件価格動向を見極めるにあたり、カギを握るプロジェクトはありますか
2017年に首都圏ではマンション平均価格が5908万円となり、バブル時に迫る勢いでしたが、2018年はさらに価格上昇が限界に近づいている印象を受けました。価格は、明らかに高くなり過ぎですので、今後は都心部を中心に価格調整が進むと見ています。2019年は住宅市場の予測が立てにくく、“相場観の不透明な年”となるでしょう。
ただ、超都心のマンションは、依然として価格上昇を続け、異次元価格の物件が出てくるでしょう。前回の消費増税8ヶ月前の2013年7月、三井不動産レジデンシャルと野村不動産のジョイント物件(JV)として港区月島駅直結の地上53階建て複合再開発大型マンション(総戸数702戸)第一期322戸が坪単価330万円で販売され、即日完売しましたが、まさしく象徴的な駆け込み物件でした。あれから5年、今(2019年1月時点)の資産価値は坪単価400万円を上回っています。
現在は、東京建物、住友不動産、東急不動産、野村不動産など6社のJV物件として開発中の「SHINTO CITY」が、近年まれにみる大規模プロジェクトとして注目されています。さいたま新都心では駅徒歩5分の立地に総計画戸数1400戸の大規模マンションに5000組の資料請求、モデルルームには1300組が来場しました。2019年に入り、いきなり第一期一次には350戸が売り出されました。
2019年もタワーマンション・ラッシュ! 湾岸エリアは注目必至
――依然としてタワーマンションの販売予定が後を絶たない湾岸エリアについては、どう見ていますか
晴海5丁目では、五輪選手村として活用される「HARUMI FLAG」(三井不動産など6社JV)が、2019年5月に販売開始予定です。駅から徒歩20分くらいかかるとはいえ、価格は周辺相場よりもかなり安く設定される見込みで、人気は沸騰するでしょう。14~18階建て17棟2690戸が先行販売され、その後50階建てタワー2棟1455戸が販売される予定です。選手村として利用されるわけですから価格的には整合性があると思います。
また、「豊洲」駅では東急不動産が総戸数1230戸の50階建てタワーマンションを建設中です。このあとも、湾岸エリアでは10件以上のタワーマンションプロジェクトが進行していくと見られ、まだまだ注目のプロジェクトが続々と登場してくるでしょう。
まだまだ続く低金利は追い風!住宅購入はタイミングがカギ
――東京オリンピック以後、住宅購入の最も重要なポイントとは
先ほども申し上げましたが、まずは価格動向に注目していただきたいと思います。そして、やはり金利でしょうね。アメリカで金利引き上げをけん制する動きが見える中、日本でも現政権が続く限り、異次元金融緩和は続きますので、当面低金利は変わらないでしょう。
ただ、「不動産は買いたいと思った時が買い時」とよく言われます。価格動向や金利情勢を見極めることは重要ですが、自分の生活や家族のライフステージにとって必要なのかどうかを見極めて購入計画を立てることのほうが、より重要だと思います。
【不動産経済研究所 代表取締役社長 高橋幸男氏】
昭和31(1956)年12月生まれの62歳。早稲田大学社会科学部卒業。1980年株式会社不動産経済研究所に入社。通信編集部部長などを経て、2013年から現職。