目指すは健康寿命日本一! 湘南の元気都市「藤沢」のまちづくり

2010年3月に、健康増進法に基づく「藤沢市健康増進計画」(第1次)を策定して以来、独自の健康づくりに関する様々な取り組みを推進している藤沢市。行政によるサポートだけでなく、市民が自発的に健康増進に取り組める環境づくりも積極的に行い、「健康寿命日本一に向けた健康増進・介護予防等の促進」を図っています。そんな中、民間の力を借りながら、健康に特化した新しい「街」が誕生したといいます。早速、藤沢へ行ってきました。

藤沢市が日本一を目指す「健康寿命」って何?

厚生労働省が2018年7月に公表した2017年の簡易統計では、日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性は87.26歳でした。つまり多くの人は、例え60歳~65歳で定年退職を迎えても、まだあと10年、20年と、余生と呼ぶには長い時間を生きることになります。そんな一生涯の中で、介護を受けたり寝たきりになったりせず日常生活を送れる期間を「健康寿命」と呼んでいます。

その健康寿命で日本一を目指す神奈川県にあって、同様に日本一の健康都市の実現に向け、「健康で豊かな長寿社会をつくる」取り組みを積極的に推進する藤沢市で、健康に重点を置いた街づくりが行われています。

ただ長く生きるだけでなく、心身ともに健康に暮らし、人生を豊かに楽しむ「生きがい」を見つけてほしい。そんな願いのもとに生まれた「スマートウェルネスシティ」の街開きに参加してきました。

子育てを終え、仕事がひと段落しても、終活にはまだ早い。充実したシニアライフを楽しむためには、いかに健康寿命を延ばすかがカギになる

街全体で健康促進  IoTとAIをフル活用した新時代のスマートタウン

快晴に恵まれた心地よい青空のもと小田急江ノ島線「藤沢本町」駅に降り立つと、湘南の海が近いからか、心地よい風が吹き抜けていきます。

目的地は駅から南東に3分ほどの丘陵地に開かれた「セキュレアシティ藤沢 翼の丘」。人生100年時代の豊かな暮らしの創造を標榜する大和ハウス工業が手掛ける環境創生・省エネ型のスマートシティに、健康促進サービスを取り入れた「スマートウェルネスシティ」です。

その目玉はやはりIoTとAIを活用したパーソナルヘルスプロモーションサービス「FAIT(ファイト)」(※1)。腕時計のように手首に巻いて用いる「FAITタグ」を用いて、毎日の食事や睡眠、歩数などの日常のデータを記録し、AIが最適な運動やメニューを提案してくれるなど、健康チェックを行うことができるそうです。

「セキュレアタウン藤沢 翼の丘」メインゲート。右手は賃貸集合住宅の建設現場、左手は藤沢市児童センター

さらに住人専用の集会所では、体力認知機能を測定することができるそうです。日々のトレーニング成果が一目でわかるデータを確認できれば、モチベーションも維持しやすそうですね。

しかもこの「FAITタグ」ひとつで自宅玄関ドアや集会所のドア、集会所の大型宅配ボックスをかざすだけで解錠できる鍵になるだけでなく、電子マネー「edy」や「スポーツクラブNAS 藤沢店」の施設会員証も兼ね備える優れもの。

おまけに街の出入り口各所に防犯カメラと合併せて設置されたビーコンオブザーバー(※2)と連携させることで、登録した家族が街の出入り口を通過したことをメールで知らせてくれるそうです。街の外に出たのか、中にいるのかがすぐにわかるので、高齢者や子どもと暮らす家族の不安やストレス軽減にもつながりそうです。心の健康もケアしているんですね。

藤沢市長 鈴木 恒夫氏による「FAIT ステーション」を使用した体力測定のデモンストレーション。写真は三角形の頂点に配置された◎が時計回りで順番に点灯するのに合わせて足を動かしリズム感を測る様子

※1.FAITとは、「Fit with AI Trainer」の略。「FAITタグ」で記録した食事・睡眠・歩数など日常の活動記録を解析し、使用者に合わせたトレーニングメニューをアドバイスするサービス
※2.ビーコンオブザーバーとは位置を確認するためのシステムのこと

地域の歴史・文化を未来へ “こころ”を生かす街づくり

「セキュレアシティ藤沢 翼の丘」の街づくりの特徴は、健康促進サービスだけではありません。多様な世帯が健康で安心して暮らせる街として、様々な工夫が施されています。

「当計画地は神奈川県立大清水高等学校との再編統合により、2011年に閉校した神奈川県立藤沢高等学校の跡地です。同校卒業生の皆様にとって大切な思い出の地ですから、教室の床板や校歌が刻まれた石碑、植栽など、多くの遺構を街の各所に利活用しています」と案内してくれたのは伊達薫氏(大和ハウス工業)。

「集会所の表に設置された時計は中身こそ最新機器に入れ替わっているものの、外装はそのまま活用しているので、文字盤には〈National(※3)〉の文字が入っているんです」とイタズラを打ち明けるように、茶目っ気たっぷりに教えてくれました。懐かしいですね~Nationalってみなさんご存知ですか?

藤沢高校の設備や建材、植栽、オブジェが多く残されている藤沢市交流センターの二階

大和ハウス工業 湘南支店 住宅営業所 所長 伊達 薫氏。交流センター1階の壁について「黒板のようにチョークで書いたり消したりができるんです」というように、身振り手振りを交えて案内してくれた

「街全体の工夫としては、藤沢と藤沢本町の2駅が徒歩圏で、丘の上の一等地ですから、道幅6mのゆとりを確保し、心地よい風が通り抜けるような区画配置を意識しています。また多くのご購入者様が自由設計を選ばれていますが、宅地内の道路境界線から50cmの範囲を緑地帯として緑化することが義務付けられています。植栽については自由ですが、藤沢の原生種を中心に選択していただくことで、景観保全にご協力いただいています」と伊達氏。

他にも藤沢宿を偲ばせる意匠やオブジェを配するなど、土地の記憶や特性、景観にも配慮しながら、心地よく暮らすための工夫が随所に施しているんですね。

ちょうど12時を指す短針で隠れてしまっているが、文字盤には確かに「National」のロゴが入っている

※.3Nationaru(ナショナル)とは、松下電器創業者の松下幸之助が考案した日本国内向けの白物家電ブランド。松下電器産業が2008年1月10日、会社名を「パナソニック」に変更するとともに、ナショナルも廃止。ブランドもすべてパナソニックに統一された

CMでおなじみ「高い天井」で開放感抜群のモデルハウス

集会所や藤沢市交流センターがある広場の南側には、「FAIT」によって提案されるいろいろなトレーニングに活用できる器具などが揃った本町四丁目公園があり、遊んでいる親子の姿も見えます。

その公園の北西側、道路を挟んで対面に2棟のモデルハウスは位置しています。早速中に入ると、高い天井のダイニングキッチンがお出迎え。
「ダイニング・キッチンの天井高は約2.7mとなっています。さらにリビングは床を一段下げることで、CMでもおなじみの約3mの天井となっています。それから、ちょっとスリッパを脱いでみてください」という伊達氏に促されるままスリッパを脱ぐと、床暖房の柔らかい熱がじんわりと伝わってきます。

この日は快晴とはいえ一歩日陰に入るとまだまだ冷える季節でしたが、床暖房の熱だけで室内は上着がいらないくらい温まっています。「今日は暖房を入れていませんので、床暖房だけでこれだけ暖かいんです。外張り断熱や3重ガラスサッシなどにより、高い気密性と断熱性を実現しています」

左から住民代表者、藤沢市長 鈴木恒夫氏、大和ハウス工業 取締執行役員 大友浩嗣氏、大和ハウス工業 湘南支店 支店長 松尾憲二郎氏。モデルハウスを背景にまちびらき記念のテープカットを行う様子

モデルハウス1階リビングでスリッパを脱いで床暖房の温もりを体感

さらに2階へ上がると、おもむろにバルコニー側の窓を開ける伊達氏。「聞こえますか?」と聞かれても何のことやら、頭に???が浮かびます。
「当計画地は小田急線の線路に隣接しているので、今もすぐ近くを何度も電車が通っているんです。私は知っていたので気付きましたが、意識しないと気付かないくらい静かですよね」と言われて耳を澄ますと・・・お、確かに微かですが電車の走る音が聞こえます。

「これだけ防音性に優れているので、トイレや浴室を二階に配置しても流水音が気になるといった問題も起こりにくいんです。水回りの配置にこだわるお客様はかなり多いので、音を気にしなくてもいい、というのは大きなメリットとなっています」

モデルルームは「セキュレアシティ藤沢 翼の丘」の中でも公園隣接、集会所対面、藤沢駅方面のサブゲート近接の一等地。内装も天然石をふんだんに採用し、かなりハイグレードな仕様となっています。価格も当然お高いですが、こんな家に住んでみたいという夢が詰まっています。売れてしまう前にもう一度、ゆっくり見学したいものです。

モデルハウス二階のバルコニー(東向き)から見た本町四丁目公園。室内にいると窓を開けていても、西側を走る電車の音には気付かないほど静かだった

もうひとつの「ウェルネス」プロジェクトが辻堂に誕生

集会所の竣工に合わせて、まちびらきの記念式典が行われた「セキュレアシティ藤沢 翼の丘」。この日も南西端のクルドサック(※4)の奥の住宅で引越が行われています。

「こうして引き渡した後、どうやってお客様の暮らしをサポートできるのか、大きな課題です。例えば植栽の手入れはプロが管理を行いますが、ただ管理をするだけでなく、ご入居者様が1~2年後にはご自身で手入れができるようにサポートを行っています。最終的な街の環境は、お住まいの皆様に守っていただくしかないので、そのためにできるサポートについては様々な検討を行っています」と伊達氏。

人生100年を健康に、豊かに暮らすための街づくり、奥が深いですね。さて実は、健康寿命日本一を掲げる藤沢市で、大和ハウス工業はもうひとつ、健康をテーマに掲げる住宅プロジェクトを推進しています。次回は辻堂を舞台に、もうひとつの「ウェルネス」プロジェクトをPick-upします。

街の南西端に配置されたクルドサック。クルドサックとは袋小路を意味し、通り抜けはできないが、Uターンが可能なロータリーのこと。円形にすることで速度を落とさないと回れないようになっている

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